初日の出
6時半に起きて、コープラーメンでエネルギー補給して
裏山に初日の出を見に行きました。
今年三十歳になる教え子と同行二人。
彼は大晦日の連作絵本会から参加、そのまま泊まってくれました。
長寿ガ丘で初日の出といえばあそこしかありません。
住宅街から更に登ったところ、日蓮宗のお寺の金色の仏様が鎮座まします白亜の卒塔婆。
誰かお詣りに来ていたらどうなるかなぁ気にはなっていたけれど
まさかあんなことになるとは。
お寺が近づくにつれ木魚のような音が聞こえてくる。
あぁやっぱり。更に近づくとそれはお寺からではなく
その上の卒塔婆から。
そして更に近づくと、南無妙法蓮華経の読経が。
更に近づくと、卒塔婆の周りをくるくる回る幟が。
夜明け前から信徒の人達が団扇太鼓を叩きながらお題目を唱えながらぐるぐる卒塔婆の周りを
廻っていらしたんだ。
どうします?と教え子が不安げに訪ねるけど、僕は教え子に
こここそ大阪平野を見晴らして初日の出が拝める最高の場所、と
教えてあげたかったから、卒塔婆が立つ展望台のような所へ向かってずんずん進む。
灯籠の間を過ぎ、階段を上り、目的地に立つ。
卒塔婆の上で行進されている人々にも一段下のここくらいならご迷惑にはなるまいと
勝手に判断して。しかし、何となく合掌しながら。
そして、日が昇る方向、その上の雲がすでに輝いている真下の地平線に真正面に向き合って。
その時です。
今までぐるぐる廻っていたお経の合唱の行進が真後ろでぴたっと止まり、
どう考えても僕の真後ろから僕の方へ向かって唱えられている。
男の人の太い声で
南無妙法蓮華経~。
女の人の高い声で
南無妙法蓮華経~。
交互に止むことなく、僕の背中は読経を浴び続ける。
何と言ったらよいのだろう。あの恐怖感を。
お経以外の言葉を口にすることのならぬ信徒の人々が
邪なる物を払うために一層声を大きく邪なる僕に浴びせているのだろうか。
さすがに居続けることはならなかった。呪い殺されるか、突き落とされるか。
遠ざかってから振り返って見ると、行列していた信徒の人々は
卒塔婆の上に(バルコニーの様になっている)座り、日の出の方を向いて読経を続けていた。
嗚呼、僕は何たる邪魔をしたことだろう。
読経し続けて日の出を待ち続けた信徒達とその太陽との間に坊主頭を現すなんて。
帰り路、滝修行をする教え子が『不動の滝』という立て札を見つけ
行ったことあります? 行ってみませんか、という彼の言葉に促されて
更に山に分け入って『不動の滝』を訪ねる。
山道に慣れている彼はずんずん進み、付いていく僕は心臓をバクバクいわせ、
膝が痛み出し、筋肉はへろへろになり、拾った枝に百歳の老人のようによぼよぼしがみついて
両側崖の雪で濡れた山道を。
何たる元旦。
こうして淡々と静かに僕の平成二十一年、西暦二千九年は始まりました。
裏山に初日の出を見に行きました。
今年三十歳になる教え子と同行二人。
彼は大晦日の連作絵本会から参加、そのまま泊まってくれました。
長寿ガ丘で初日の出といえばあそこしかありません。
住宅街から更に登ったところ、日蓮宗のお寺の金色の仏様が鎮座まします白亜の卒塔婆。
誰かお詣りに来ていたらどうなるかなぁ気にはなっていたけれど
まさかあんなことになるとは。
お寺が近づくにつれ木魚のような音が聞こえてくる。
あぁやっぱり。更に近づくとそれはお寺からではなく
その上の卒塔婆から。
そして更に近づくと、南無妙法蓮華経の読経が。
更に近づくと、卒塔婆の周りをくるくる回る幟が。
夜明け前から信徒の人達が団扇太鼓を叩きながらお題目を唱えながらぐるぐる卒塔婆の周りを
廻っていらしたんだ。
どうします?と教え子が不安げに訪ねるけど、僕は教え子に
こここそ大阪平野を見晴らして初日の出が拝める最高の場所、と
教えてあげたかったから、卒塔婆が立つ展望台のような所へ向かってずんずん進む。
灯籠の間を過ぎ、階段を上り、目的地に立つ。
卒塔婆の上で行進されている人々にも一段下のここくらいならご迷惑にはなるまいと
勝手に判断して。しかし、何となく合掌しながら。
そして、日が昇る方向、その上の雲がすでに輝いている真下の地平線に真正面に向き合って。
その時です。
今までぐるぐる廻っていたお経の合唱の行進が真後ろでぴたっと止まり、
どう考えても僕の真後ろから僕の方へ向かって唱えられている。
男の人の太い声で
南無妙法蓮華経~。
女の人の高い声で
南無妙法蓮華経~。
交互に止むことなく、僕の背中は読経を浴び続ける。
何と言ったらよいのだろう。あの恐怖感を。
お経以外の言葉を口にすることのならぬ信徒の人々が
邪なる物を払うために一層声を大きく邪なる僕に浴びせているのだろうか。
さすがに居続けることはならなかった。呪い殺されるか、突き落とされるか。
遠ざかってから振り返って見ると、行列していた信徒の人々は
卒塔婆の上に(バルコニーの様になっている)座り、日の出の方を向いて読経を続けていた。
嗚呼、僕は何たる邪魔をしたことだろう。
読経し続けて日の出を待ち続けた信徒達とその太陽との間に坊主頭を現すなんて。
帰り路、滝修行をする教え子が『不動の滝』という立て札を見つけ
行ったことあります? 行ってみませんか、という彼の言葉に促されて
更に山に分け入って『不動の滝』を訪ねる。
山道に慣れている彼はずんずん進み、付いていく僕は心臓をバクバクいわせ、
膝が痛み出し、筋肉はへろへろになり、拾った枝に百歳の老人のようによぼよぼしがみついて
両側崖の雪で濡れた山道を。
何たる元旦。
こうして淡々と静かに僕の平成二十一年、西暦二千九年は始まりました。