うさぎとかめとおきれさま/第十見開き
おきれさまは言葉足らずで何が言いたいのか
よく解らないので、僕の経験を参考までにご紹介します。
数年前、イラストレーターになりたいという夢を語る
ある少女と出会ったのですが、よくよく話を聞いてみると
どうも、少しもイラストを描きたい訳ではなくて
イラストレーターという彼女の空想の産物に
変身したいだけらしいという感じなのです。
サイン会の列に並んだ時、何時かはあっちに座りたいと思ったと
目を輝かせていたのですが、聞いてみると少しも絵を描いていないのです。
この夏持ち込みに行こうと思ってます、という具体的な野心を聞かされた時も
少しも持ち込むべきイラストを描いていませんでした。
僕自身怠け者ですから別に努力が足りないとも思わなかったし、
手抜きでも夢が叶ったらいいなと思ったのですが、そもそも
彼女の憧れているモノの正体が全く想像つかなかったのです。
その夢が叶うとはどういうことなのか、叶った夢の実体はいったい何なのか。
夢が叶うことが夢。夢見ることが夢。そんな世界が彼女のパラダイスならば
本当に夢が叶っても、そこにあるのは天国と呼ぶにはあまりにもつつましい
イラストレーターという職業があるだけではないのだろうか。
おきれさまはそんなことを言いたいのだろうか。
よく解らない。
