悔い
月曜はやっぱり人が少なかった。
カウンターにも店員さんは一人だけだった。
彼女は二階の食器を下げに行ったり、材料を取りに行ったり
席を外すこともあった。
ちょうどその時一人の女性客が入って来て、席を確保し、バッグから財布を取り出し
カウンターを向いたけど、誰もいない。
酒類を振る舞っている奥の方へ目をやったが、彼女に気づくウエイトレスも居ない様子だった。
彼女は少し待った。誰か彼女の方を向かないか。
やっと、他の客とのやり取りでこっちを向いたウエイトレスがいたが
彼女には気づかなかった。
彼女は諦めて、それとも堪忍袋の緒を切らせて、いや、きっと尾が切れる前に、
誰にも気づかれない自分という心の傷と財布をバッグにしまい、店を出て行った。
どうして、僕はウエイトレスさんに声をかけてあげなかったのだろう。
他の客は皆二人づれ以上で、友達を無視してまで、他人に注意を払う筈等ない。
気づいていたのは僕だけだったのに、僕がウエイトレスさんに
『あのお客さまがさっきから待ってらっしゃいますよ』と声をかけていたら
彼女も気分を害さず、気持ちよくお茶をし、わざわざこの店を覗いたことをくいることもなく
楽しい時間が過ごせたろうに。
お店もお客さまに不快な思いをさせずにすんだろうに。
悔いても、悔いても仕方ないことだけれど。
あのウエイトレスさんが声をかけやすいタイプの人だったら・・・。
悔いが残る。
月曜日は最悪の一日だった。
中秋の名月とやらも見ずに眠った。