klimbrothers’s 童話と絵ブログ

本当ハ面白イクリム童話と絵描きグスタフクリムのブログです。

悔い

月曜はやっぱり人が少なかった。
 
カウンターにも店員さんは一人だけだった。

彼女は二階の食器を下げに行ったり、材料を取りに行ったり

席を外すこともあった。

ちょうどその時一人の女性客が入って来て、席を確保し、バッグから財布を取り出し

カウンターを向いたけど、誰もいない。

酒類を振る舞っている奥の方へ目をやったが、彼女に気づくウエイトレスも居ない様子だった。

彼女は少し待った。誰か彼女の方を向かないか。

やっと、他の客とのやり取りでこっちを向いたウエイトレスがいたが

彼女には気づかなかった。

彼女は諦めて、それとも堪忍袋の緒を切らせて、いや、きっと尾が切れる前に、

誰にも気づかれない自分という心の傷と財布をバッグにしまい、店を出て行った。



どうして、僕はウエイトレスさんに声をかけてあげなかったのだろう。

他の客は皆二人づれ以上で、友達を無視してまで、他人に注意を払う筈等ない。

気づいていたのは僕だけだったのに、僕がウエイトレスさんに

『あのお客さまがさっきから待ってらっしゃいますよ』と声をかけていたら

彼女も気分を害さず、気持ちよくお茶をし、わざわざこの店を覗いたことをくいることもなく

楽しい時間が過ごせたろうに。

お店もお客さまに不快な思いをさせずにすんだろうに。



悔いても、悔いても仕方ないことだけれど。

あのウエイトレスさんが声をかけやすいタイプの人だったら・・・。

悔いが残る。



月曜日は最悪の一日だった。



中秋の名月とやらも見ずに眠った。